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ローソファの体験記

三か月に一度の給与現金支給も「お金への感謝」ということになる。
給料袋を手渡す上司も部下に対する責任感が養えるというわけだ。
「経理は大変ですが、ピン札でもらえるから、けっこう嬉しいもんですよ」(Xさん)。
二階には研修ルームに会議室、昨年までは工場にあった開発室が入る。
「営業現場に近づき、客の感度をつかむ」開発室はまさにCMで見たような雰囲気だ。
もちろん本格的な施設は工場にあるが、それでも多くの実験機器や道具、生薬を主とした薬類に囲まれ、私も白衣に身を包んだかのような錯覚をおぼえる。
優秀な主婦の人材確保のため、仮保育室までここに用意されているのには驚く。
再度、三階フロアへ。
ここに再春館のすべてが集約されているといっていい。
仕切りなく開放された空間に、社長席からオペレーションーエリア、広告や企画セクッション等が効率的にレイアウトされ、全部が筒抜け。
欠伸などしようものなら、社員全員に注視されるようで、これには身が引き締まる。
そして、時折、太鼓を叩く音が聞こえる。
それによって各部門のリーダーが全員集合し、所属長の命令を聞く。
そこかしこで戦闘が行われる合戦場のような趣だ。
実際、コミュニケーターの各パソコンには、各人の名前をプリントした小さな幟が立てられている。
全員が女性で、彼女たちの背後には大きな集計板が刻一刻と変化する受注状況を映し出す。
個人の成績もPOPで示され、色別に売上げ、購入者、その日の会話(相手)数まで一目瞭然だ。
S社のオフィス(撮影・筆者)社員でまかなうというのも、他社とは大きく異なる点。
それだけの責任感を持って仕事をして欲しいんです」Xさんの眼は「戦場」を見つめる指揮官のそれになる。
多忙を極めている様子のXさんは、その間もひっきりなしに鳴る携帯に、無視ときどき早口で応対といった感じ。
申し訳ないが私としては喰らいつくまでだ。
ある反省大きくアウトバウンド(営業)とインバウンド(受注)に分かれるコミュニケーターの職務だが、当然、前者のほうがスキルは高い。
ともかく電話に出ていないコミュニケーターはほぼ皆無、というほどの目まぐるしさをしばらく眺め、「少し休みましょう」というXさんと円卓に戻る。
Xさんは再春館がなぜこうまでガラス張りなのかについて説明を始めた。
んかな』姿勢が強く出すぎて、実際、返品も多く、それまでほぼ二桁成長で来たのが、かつてないほど売上げも落ち込んだんです。
そこで三か月間、一切アウトバウンドをやめました。
そして、お客様がなにを求めているかの見直しを図り、インバウンドを能動的にし、お客様に好印象を持っていただくことが売上げに結びつくという基本に立ち戻らされたのです。
そのころ、アウトバウンドが七割を占めていたのが、今では逆転しています」確かにCMからして変わった。
以前はキャラクターに泉ピン子やN・K玉緒を起用し、イケイケどんどんの印象が強かった。
それが、例の江守のナレーションCMが象徴する、試用してもらった上での、納得購入という商法に変わっていく。
その後Xさんは、セールスプロモーション部お客様満足室のA・Rを私に紹介して、ひとまず自分の仕事些戻った。
研究開発担当のA・Rは、私に同社製品について事細かに説明してくれたが、ここでは省かざるを得ない。
ただ、DR社は肌の老化を止めるのではなく、加齢とともに落ちる肌機能をふたたび高める「医薬品」という、いつものコピーも、漢方を熟知したA・Rの口から聞けば新鮮に響く。
A・Rは漢方を「経験の医学」だという。
調査を繰り返して、その発見を製品に応用していく。
これは通販というビジネス自体にいえることではないだろうか。
午後二時になって、私とXさんはようやく遅い昼食を取った。
社員食堂を見れば、その会社がわかると誰かがいっていたが、同社の社食は自然食グルメの豪華版。
メインの海鮮丼に様の副菜が取り合わせられ、その皿数およそ二〇。
ふんだんなサラダ類に筑前煮やひじきなどお袋の味をめいめい好きなだけよそって並べている。
工場敷地内の農園で作られた無農薬有機野菜を使用するなど、素材にもこだわり抜き、屋台の鍋さながらにおでんまで用意。
白玉あずきなどデザートそれに栄養管理も仕事のうちですからね。
三か月一品たりとも同じメニューは出さないのが社長方針。
自己負担分は毎食三百数十円ですが、しっかり食べれば、一〇〇〇円以上の価値は十分あります」と、ようやく寛いだ表情のXさんにその経歴を聞けば、元は画家志望だったという。
大学院顧客サービスという表現を追究しているわけだ。
今では忙しくて絵筆を握ることも滅多にない言葉の魔術師による経営学食後もY・Kチーフによる社史についての「講義」があり、私はまるで大学校舎内にいるようだった。
一九三二年に漢方薬製造販売店として発足したS社は、当時から今でいうDM通販を手がけていた。
再春館のもう一枚の看板、痛散湯は創業当時からの商品だ。
五九年には株式会社になり、七四年にはDR社を開発、翌年に発売した。
ところが、ちょうどそのころ、オイルショックの煽りを喰らって経営困難に。
そこへ八二年に現社長のN・Tと亡夫が再建役を買って出て、テレマーケティングで活路を開いたのだ。
フリーダイヤルの番号を日本で初めて獲得したのも同社とか。
年間売上高は九六年に飛躍的に伸び、一五〇億円を突破。
以降も緩やかな右肩上がりで推移し、二〇〇二年は一八三億円を記録する。
私はY・Kと対談Nさんの姿を目にした。
威勢よく社員に喝を入れながら、社長席まで揚と歩く様は、「お嬢」と呼ばれた昭和の大歌手を想起させる。
派手な和服の着こなしも堂に入って、要はカリスマを絵に描いたような人なのだ。
守るところは守り、変えるべきは変える。
かつては主婦が中心だったコミュニケーターも今では大卒者ばかりだという。
商品特性上、全社員(約五〇〇人)の九割は女性ということになる。
ちなみに、そのマナー教育の徹底ぶりから、「嫁をもらうなら再春館」と地元では囁かれもするとか。
広告が販促のためにあるのではなく、販売ツールそのもの、というのも同社のいわばキモだ。
電通・博報堂・アサツーDKの三大広告代理店が常時乗り入れているのだが、このあたりの話をマーケティング部のK・Tに聞こうにも、なかなかガードが堅い。
確かに主婦向け番組が流される昼の時間帯には、実際の使用者を起用した実効性の高い効果を絶妙に組み合わせているのでインパクトが強いのだろう。
その日の操業はすでに終わっていたけれど、工場長のM・Yは、その内部の逐一を、通るごとに明かりを点けて見せてくれた。
テレビCMでおなじみの玄関ピロティ「出会いと交流の広場」に私も立った。
「緑効青汁」で一躍浮上した福岡のA社に向かった。
博多駅から徒歩でわずか数分、滞洒なビルを構えるA社の青汁は、ケールを使うこれまでの青汁とはまったく別途のものだ。
社長のK・Rは脱サラ組で、寝たきりの祖母を抱えていたことから、かねてから健康を斬り口とする仕事を望んでいた。
身体の中心は胃腸であり、すべての健康に繋がると信ずるK・Rは、ある時、大麦の若葉が胃腸の働きを助けるのにいいと聞きつけ、これを刈り取って乾燥させ微粉砕し、食物繊維として体内に取り入れたらどうかと思いついた。
そして、より効果的な摂取のためオリゴ糖と乳酸菌を配合し、新たな「青汁」を生み出したのである。

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